Peoneyboy

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芸術家たちの楽園

6

 午後の早い段階で今日の分の仕事が終わったカーヴェは、ズバイルシアターへ向かった。ここ最近の彼はいつも、早めに仕事が終わったときはズバイルシアターへ行くようにしていたのだ。
 その日はカーヴェがシアターへつくと、ちょうどシェイクズバイルが舞台の隅に用意した作業場で、大量の書物とほとんどなにも書かれていない紙束を前にして脚本の制作を行っているところだった。様子を見るに、どうやら状況はあまりかんばしくなさそうだ。
「調子は?」
 カーヴェの言葉にシェイクズバイルは顔をあげた。カーヴェの顔を見るなりシェイクズバイルは深いため息をつくと、右手に持っていたペンを机の上に投げ出した。
「見ての通りだ。なにも進んでいない」
「なるほどね。ちょっと待ってくれ」
 カーヴェはそう言うと、近くにあった椅子を机の方に引っ張ってくる。そして、シェイクズバイルと机を挟んで向かい合う場所に腰を落ちつけると続きを話し出した。
「なにに対して困っているんだ? 人に説明するのは少し難しいことかもしれないが、行き詰まっている箇所を教えて欲しい」
「そうだね……」
 カーヴェの言ったことに対し、シェイクズバイルは考えをなんとかまとめあげようとしているのか、考え込むような姿勢をとった。しばらくすると考えをまとめきったのか、カーヴェに対して説明し出した。
「今回公演する予定だった劇は、歴史学の内容を取り入れたものだったんだ。だから、既に学術的要素は充分含まれているものだと俺は思っていて、教令院の許可をもらうには、さらにどういった内容を入れるのが良いのかと考えていた。行き詰まっているのはその、というところで――違う学派の内容を取り入れるべきなのか、歴史学の内容をさらに深掘りして入れるべきなのか、どちらが良いか考えていたらよくわからなくなってきていたんだ。カーヴェさんの意見を聞いてもいいだろうか?」
「なるほど、そういうことだったのか」カーヴェはあごに手をあてて十秒ほど考えた後、続きを話し出した。「僕個人の意見としては、歴史学の内容を深掘りするのが良いと思う。あまり違った方向の学問の内容を劇に入れ込むのは、ひとつの劇としてまとめあげるのに苦労するだろうし、それぞれの学問を中途半端に浅いところだけかじったようになってしまいそうだからね。中途半端になってしまっては、それこそ教令院の審査で認められないと再び言われるだろう。だから他の学問には手を出さず、今の方向性でより深堀りできるといいんじゃないかと思う。そうだな――」
「たしかにカーヴェさんの言う通りだ。そちらの方が、いいものができそうだ」シェイクズバイルはそう言うと続けて、再度考える姿勢をとり出したカーヴェに対し尋ねた。「もしかして、なにか妙案があったりするのか?」
「ええ、ああ――うーん、そうだ」
 カーヴェは思いついた意見を話し出した。
「今回の劇の舞台となっている王朝があるだろう。この王朝に関しては古くから研究されているが、近年、全く新しい説が提唱されていたりするのを知っているだろうか。教令院でも、まだこの説の支持者はそれほど多くないが、一部の学者たちは今まで説明が曖昧になってしまっていた箇所がより筋道の通った説明ができそうだということで、熱心に研究している。学者というものの中には皆が目をつけない部分をあえて中心にえて研究することで、誰よりも先に新しい発見をなし得ようとするのがいるからね」
「そのような説が新たに提唱されている件については初耳だ。カーヴェさんはその新説について内容をよく知っているのだろうか?」
 解決方法が見えてきたのを感じたのか、シェイクズバイルは少々かすような早口で詳細を聞いた。
「既に発表された論文にまとめてある内容なら多少は。あくまで僕は建築デザイナーで新説を研究している因論派の学者ではないから、専門家には劣るよ」カーヴェは皮肉めいた調子で言った。「だが、僕が読んだ論文の中になんというのか――様々な理論の基本となっているものがひとつあってね。現在新たに発表されている論文は、全てその論文で提唱された説を掘り下げたり、違う角度から述べたりしたものなんだ」
「要するに、カーヴェさんは基本についてはしっかりおさえているということだな。基本となっている論文については理解しているのだから」
「そういうことだといえるかもしれない」
 カーヴェはそう言った。シェイクズバイルはカーヴェが全てを説明せずとも状況を理解しつつあるようで、かなり頭の回転の早い人物であるということが見受けられる。まるで、教令院の学者のようだ。
「それでこれは提案になるのだが、他のと同じく、基本となっている論文から掘り下げたり違う角度から述べるのはどうだ」
「脚本を?」
 シェイクズバイルが言うと、カーヴェはすぐさまうなずいた。「そうだ」
「なかなか斬新な発想だ」
 シェイクズバイルはそう言いながら少々考え込んだ後、結論はすぐには出ないと思ったのか、「少し考えさせてほしい。教令院の連中はたしかにその方法で文句を言わなくなりそうだが、劇としての面白さをどう付け加えるかが、いまいちイメージがわいてこないんだ」と言った。
「たしかに、もう少しそちらの観点はつめるべきだな。僕の方でも考えてみるよ」
「ありがとう。考える上でまずはその例の論文に目を通しておきたいのだが、読むことは可能だろうか? 教令院の卒業生でもない、ただの一般市民である俺が論文を読むことはやはり難しいだろうか」
 シェイクズバイルは不安気な様子でそう言った。彼が不安になるのも無理はない。論文をよく読むような人たち――例えば、学者や教令院の学生、卒業生は論文を閲覧したいとき、アーカーシャに頼るか教令院内の知恵の殿堂で閲覧するかどちらかの選択肢をとることが多かった。それらの選択肢は論文をよく読む人たち以外の、いわゆる一般市民には敷居が高い。
 アーカーシャから論文の情報を得られるのだったらそう難しいことではないが、教令院にいた経歴のない者がアーカーシャを使ったとて大した情報は得られない。アーカーシャが提供する情報は使用者の年齢や身分、経歴によって変わるからだ。『経歴』の部分には教令院に在籍してたことがあるかどうかも含まれるため、一般市民はアーカーシャで詳細な論文の内容を知ることが難しい。
 では、知恵の殿堂で閲覧する方法はどうかというと、これはたしかに学者たちが得られるものと同等の情報を得ることができるかもしれないが(前提として、読んで理解することができるというのはあるけれども)、論文の多くが持ち出しを禁止されているという問題があった。学者や学生だったら論文を読んで知識を得て、それを元に論文を書くことが本業だから知恵の殿堂に入り浸ることは簡単にできるが、他に本業のある者が一日中入り浸ることはできないだろう。こちらの手段は時間的制約で難しいのだ。持ち出せて仕事の間に読むことができるのなら敷居は下がるが、それができないのである。
 しかし、カーヴェはそれらの手段以外で論文の情報を得る方法を思いついていた。ある人物の協力はいるが、それはなんとかなるだろう。カーヴェはルームメイトの姿を思い浮かべた。
「読むことは可能だし、わざわざ知恵の殿堂までおもむく必要もないよ」カーヴェはシェイクズバイルの不安を払拭ふっしょくするかのように明るい口調で言った。「なぜなら、僕の知り合いが論文の掲載された書籍を持っているからだ」
 なぜ、ルームメイトのアルハイゼンがくだんの論文が掲載された書籍を持っていることを知っているのかというと、アルハイゼンから勧められた書籍を読んだことをきっかけに、カーヴェはこの新説について知ったのだという事情があるからだった。
 アルハイゼンから論文を勧められることは彼らの間でたまにあることで、カーヴェが勧められた論文に目を通した後、その内容について語り合うのは趣味嗜好が正反対の二人がもめることなく会話することのできる数少ない話題でもあった。
 件の論文が掲載された書籍をアルハイゼンが持ってきて勧めたときの様子を、今でもカーヴェはよく思い出せる。仕事終わりのカーヴェに対し、珍しくアルハイゼンは興奮を隠しきれないといった様子で書籍を渡してきて――まるで押しつけるかのように――「早く読んでみてほしい」という、ほとんど彼が口にしないような『してほしい』という単語まで付け加えたのだ。忘れる方が難しいくらい、かなり印象深いできごとであった。
「それは本当か?」シェイクズバイルは嬉しさを隠しきれない様子で言った。
「ああ、本当さ」
 アルハイゼンの性格からいって、そんなお気に入りの論文が掲載された書籍を捨てたり売ったり、譲渡したりすることは考えにくかった。家のどこかにはあるだろう。
「今度ここへ来るときに持ってくるよ」とカーヴェは約束した。

 カーヴェたちがすみの方で脚本について話している間、ステージの中央では劇団員たちが練習を行っていた。
 シェイクズバイルとの話がひと段落したのもあって、カーヴェはふとステージの方を見た。彼がステージの方を向いたとき、ちょうど赤髪の少女が舞台にあがろうとしているところで、ステージ上にいた他の劇団員たちはその少女が舞台へあがったのを見ると、彼女に場所を譲るようにして舞台の中央から移動して行った。
 カーヴェは赤髪の少女の姿を見て、どこかで見たことがあるような、という既視感を感じていた。しかし、記憶を探ってみても彼女と会った場所までは思い出せない。彼女のような『真っ赤』という表現ができるくらい鮮やかな赤の髪色をしている者はスメールシティでは珍しいので、一度会ったのなら忘れないはずだ。それなのに思い出せないのはなぜだろうと、カーヴェは首をかしげた。
 赤髪の少女は他の劇団員たちが中央から移動したことを確認し終えると、静かに手足を動かし始めた。たおやかに、ときには力強く。スメールでは珍しい、を踊っているのだ。とても美しい舞だ、とカーヴェはその様子に目を奪われた。
 しばらくの間カーヴェは彼女の舞を眺めていたが、あるとき突然、先ほどの既視感の原因について思い至った。画家の男の家で見た、素晴らしい絵画に描かれていた様子ではないか。たしかあのとき、画家の男はズバイルシアターの踊り子を題材に描いたと言っていたし、その線からも条件が一致する。カーヴェは既視感の正体について、そうに違いないと思った。
 実際の舞は絵画とは違った良さがあった。絵画は舞の一部分だけを切り取ったものだが、踊っているところを実際に観るのは踊り子の息遣いやその時々で違うであろうという表現なども感じられた。絵画は描き手が一番良いと思った瞬間をその絵画がなくならない限りは残すことができるものだ。反対に、今観ている舞はこの瞬間しか観ることのできないもので、もう二度と全く同じものを観ることができないという、一種の儚さが良いのだろうとカーヴェは思った。
「素晴らしいだろう」
 シェイクズバイルは踊り子の舞の邪魔にならないよう、小声でカーヴェに話しかけた。ずっと舞に見とれていたカーヴェはその言葉でわれにかえると、シェイクズバイルの方を振り向いた。
「ああ、とても素晴らしい舞だ。この前、知り合いの画家にとある絵画を見せてもらったのだが、それがおそらく、彼女が踊っている様子を描いたものだったんだ。あれは、ある種の神々しさまで感じるような素晴らしいものだった。実物は絵画とは違った良さがある。絵画は踊りの一瞬を切り取ったものだからかな。なんというか言葉で表すのは難しいが、この今観ているものはこのときしか観ることができないのだという、儚さを感じるような美しさなんだ」
 そうやってカーヴェは感想を述べると、再度ニィロウの舞の方へ視線をやった。
「カーヴェさんのような感想をニィロウの踊りに対して抱く者は多い。皆、言葉で言い表せないがひきつけられるなにかがある、という感想を言うのだ」とシェイクズバイルは満足そうに言った。
「ああ、その気持ちはものすごくよくわかる」
「彼女の踊りはシアターの演目の中でも人気のあるもので、脚本を作る際には彼女の舞を劇中にも取り入れるためにはどうすれば良いかをよく考えている。劇に踊りの場面を入れるというのはすごく難しいことなんだ。これまで脚本を書く上で何度、頭を悩ませたことか。どうやっても踊りの場面のうまい入れ方を思いつかない場合は、あきらめて劇の後か前にニィロウの踊りだけをステージ上で披露するようにしたこともある」
 シェイクズバイルは過去の思い出を振り返っているのか、楽しそうな笑みを顔に浮かべつつ言った。
「待ってくれ」カーヴェは突如として声をあげた。
 カーヴェがシェイクズバイルの話に横やりを入れたのは、話を聞いたことで彼の中になにかが浮かび上がろうとしていたからであった。考えを数秒の間にまとめあげると、彼は再度ニィロウの舞から視線を隣に立つ男の方へやり、話し出した。
「ニィロウさんの踊りが今、僕たちが悩んでいる、いわゆる、劇としての面白さをどうするか、という課題の解決に繋がったりしないだろうか」
「言われてみればたしかに、その方向から効果的な策を見い出せそうな気もしてくるな」
 シェイクズバイルはそう言うと、教令院の求める学術的な要素と芸術的要素である舞を両立させられないか、という件について深く考え出したようだった。まるで難解な問題に直面している最中の教令院の学者のような面持ちで、彼は顎に手をやった。隣の男が考えるのを見て、カーヴェも同じように顎に手をやりつつ思案する。こうやって誰かと同じ問題について考えをめぐらすのは、学生のときの共同研究以来かもしれないと思った。
「二人して同じポーズをとってどうしたの?」
 可憐な声で話しかけられたことで、カーヴェとシェイクズバイルは一気に現実に引き戻された。二人が同時に顔をあげると、そこにいたのは先ほどまで舞台上にいた赤髪の少女――ニィロウであった。彼女の顔を見て、カーヴェは舞台の方に視線をやったが、どうやらいつの間にか彼女の舞の練習は終わっていたようであった。
「練習は終わったのか、ニィロウ」シェイクズバイルは顎に手をあてる体勢はやめ、砕けた調子で言った。ズバイルシアターのマネージャーとして、団員のことを気にかけているといった様子だ。「少々考え込みすぎてしまっていたようだ。今回も、とても難解な問題について考えていたからな」
「ズバイルさんが頭を悩ませていることだというと、私の踊りをどのように劇に取り入れるのかってこと?」とニィロウは言った。
「そうだ」シェイクズバイルは少女の言葉にうなずく。「舞を劇へ取り入れることと学術的要素を高めることの両立をどのようにするのかを考えていたのだ」
「カーヴェさんも?」
 ニィロウはマネージャーの隣に立つ男へ向かって尋ねた。ニィロウはカーヴェのことを知っているようだった。この前カーヴェがアドバイザーを引き受けたことについてシアターのメンバーへ紹介された際にニィロウもその場にいたか、もしくはカーヴェの噂――要するに建築デザイナーとしての噂だ――について聞く機会があって、彼の名前を知っているのだろう。
 カーヴェはニィロウの問いに対し、顎にあてていた手をおろしてからうなずいた。「ええ、そうです――あ」
「なにか良い案でも浮かんだのか?」
 突然なにかをひらめいたような声をあげたカーヴェに対し、シェイクズバイルはアイデアを聞きもらさないように、とでもいうかのように少々前のめりになって尋ねた。
「すまない。今引き受けている仕事のアイデアをひらめいただけなんだ」カーヴェは期待している様子のシェイクズバイルをがっかりさせないよう、続けた。「ああ、でもこれはニィロウさんの舞のおかげだ」
「私の?」
「そうだ。僕にとって美しいものを鑑賞することは良い気分転換にもなるし、新たなインスピレーションがわいてくるきっかけにもなるんだ――あ」
「今度はなんだ?」先ほどとは違ってシェイクズバイルはあまり期待をしていない調子で言った。
「その、ものはとらえようではないのかと思って」カーヴェは自身の考えを話し出した。「ニィロウさんの踊りのことさ。うまく劇と調和する形で踊りを取り入れなければならないとシェイクズバイルさんは思っているようだが、そうしなければ踊りは劇とは全く無縁になってしまうのかというと、決してそうではないと僕は思うんだ」
「どういうことだ?」
「僕は先ほど、ニィロウさんの舞を見て仕事のアイデアが浮かんできたんだ。僕の仕事と踊りは一見すると関係ないものだが、から僕のを出すことができただろう。要するに一見、直接は関係なさそうなものでも間接的に作用して手助けになるということは往々にしてあると思うんだ」
「ちょっと待ってくれ」
 シェイクズバイルは一旦、カーヴェが話し続けようとするのを制止した。
「つまり、俺が苦肉の策で劇の前や後に、劇の内容とは無関係のニィロウの踊りを披露してもらっていたことも意味があったのだということだろうか」
「なるほどね。なんとなくカーヴェさんが言いたいことはわかった。そういうことだと私は嬉しいし、たしかにそうかもしれないと思えてくる」そう言いながら、ニィロウはシェイクズバイルの方を向いた。「だって、お客さんの中には数はそれほど多くないけれども、教令院の学生さんや学者さんもいるじゃない? あの人たちになぜシアターの公演を観に来ているかを聞いたとき、皆口をそろえて言っていたの。『研究や勉強の息抜きになって、公演を観終わった後より研究や勉強がはかどるからだ』って」
 二人の言うことに対し、カーヴェはうなずいた。
「そうだろう。それで僕はあえて、劇の脚本は新説の内容を深く掘り下げたものにする提案をしたい。誰にでも理解できるよう、新説の内容を簡単に上辺だけかじったような内容にしないということだ。たしかに一度で完全に理解してもらうことは難しいかもしれないが、ニィロウの踊りの力を借りて、人々の記憶に劇の内容を残すようにしたい。記憶というのはなにか印象的な物事と一緒だと、長い間残しておきやすいものなんだ。加えて、その印象的な物事をきっかけにすることで、一緒に覚えておいたことを引き出せたりもするだろう」
「要するに、ニィロウの舞で劇の内容を印象づけて、後で観客に舞を思い返すことをきっかけにして劇の内容も思い出してもらおうということだろうか」シェイクズバイルは自身の理解を述べた。「一度では理解できない内容であろうとも何度も思い返す――つまり、復習することで、劇の内容を理解してもらおうとする」
 カーヴェはうなずいた。
「そういうことだ。劇の内容の理解をニィロウさんの踊りで助けてあげるという作戦かな」
「カーヴェさんはなかなか斬新な発想をするな」
 シェイクズバイルはそう言った。カーヴェはその発言に対し少々身構え、シェイクズバイルから視線をそらした。
 のっとっていない提案はまずかったであろうか。けれども、あの頭の固い教令院の連中を納得させるには、これまでにない方向での発想が必要だと彼は思っていたのだ。先ほどした提案の内容にカーヴェは自信があったが、だからといって長年ズバイルシアターのマネージャーをやっているシェイクズバイルが納得するかどうかは別問題だ。シェイクズバイルが教令院に所属する大多数の学者のように頭の固い人物であるのならば、この提案は退けられるであろう。
「この提案は良いと思う」
 身構えたカーヴェが聞き取ったのは肯定であった。全て否定される可能性も考えていたため、カーヴェは安堵あんどし、シェイクズバイルの方を見た。
「その方向でいこうではないか」とシェイクズバイルは言った。
「面白い提案ね」そう言った後、ニィロウはやる気に満ちあふれた様子で続けた。「新しいことはどんどん試していきたい。だって、型にはまったことだけを続けていたら、そのうちお客さんに飽きられてしまうかもしれないもの。この新しいタイプの劇を成功させられるように私も頑張りたい」
「二人ともありがとう。僕もアドバイザーとして引き続き頑張るよ」
 カーヴェはそう言うと、嬉しそうに笑った。


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