Peoneyboy

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あなたへ贈る祝福を

『星々の間では、時に相手を強くサポートする力が生まれる。その力は、相手の進む軌道をも変えてしまうことがある。占星学を学ぶ者の視点から見れば、人と人の付き合いも同じである。例えば筆者のように、同じ周波数を持つ人に出会えれば、奇跡を起こせるかもかもしれない』
 
 レイラは論文の最後に謝辞としてこの文章を書き終えると、ペンを置いた。論文の体裁が指定されたものになっているかざっと確認する。表紙、ページ数――抜けている図表もないし、参考文献も漏れなく記載されている。
 論文を無事に書き上げ安堵した気持ちのまま、レイラは自室の壁にあるボードへピンで留められたカレンダーを見た。もう日付は変わってしまっているので、明日が花神誕祭のパレードが行われる日だ。そして、論文の締め切り日は明後日。つまり花神誕祭中、最も大きな催しであるパレードを論文について心配することなく楽しむことができるのだ。今まで睡眠時間を削ってまで頑張ったおかげだ、と思いながらレイラは立ち上がった。パレードの時間まで今すぐにでも寝てしまいたかったが、できあがった論文を早めに提出するのには越したことがない。
 レイラは人とすれ違っても恥ずかしくない程度に身支度を整えると、自室を出て教令院に向かって歩き出した。

 いつもの感覚があって、彼女は自身が見ているものが実際に己の瞳で感じとっている光だというのを認識した。今までで見ているのだと思っていなかった彼女にとって、その光は眩しすぎるほどだ。目を細めて光に目を慣らそうとしながら、もう一人のレイラ――星空の祝福は自身の人格が表側に出たのだと思った。
 彼女は自身が置かれている状況を確認しようと、急いであたりの様子を観察し出した。これは表に出る人格が入れ替わった際、彼女が最初に行うことだ。過去に人格の入れ替わりの起こったタイミングが悪く、入れ替わり直前まで会話していた相手を怒らせてしまったことがあり、それからというもの彼女は必ずそうしていた。
 彼女の目の前には扉があった。教令院にある扉と酷似した意匠が施されている。十中八九、この扉は教令院にあるもので、つまりここは教令院なのだろう。扉にはレターボックスが設置されている。そして、彼女の手にはちょうどそのレターボックスへ折り曲げることなく入れることができるくらいの大きさの紙束があった。ページをめくってざっと内容の確認をする。表紙をめくった二ページ目には『星々の相互作用による影響について』という一文が記載されていて、最後から二つ前のページには謝辞が、最後のページには参考文献が書かれている。この紙束はレイラが執筆していた論文ではないかということに彼女は思い至った。
 おそらく、レイラは論文を書きあげ教令院へ提出しに来たのだろう。そして、提出する直前にレイラは眠りに落ちてしまった。この推理におかしなところはひとつもない。
 そうやって彼女は結論づけると、レターボックスへ手にしていた論文を滑り込ませた。これで提出は無事に完了した。それにしても論文を提出しようとした途端に眠ってしまうなんて、相当無理をしていたに違いない。パレードの時間までに目覚めれば良いのだけど。
 もう一人の自身に対して彼女はそのように願わずにはいられなかった。なにせ、レイラのここ最近の頑張りようを一番よく知っているのは彼女だったからだ。

 自室に戻り寝て次に目覚めたときも、彼女は自身が見ているものをはっきりと認識することができた。彼女の人格が表側に出ていないときは、はっきりと物事を認識することができず、常にどこかがかかったような視界の中、レイラが話していることだけがぼんやりと聞こえてくる。だから、はっきりと景色が見える時点で、まだレイラが眠りについたままであるということが彼女にはわかった。
 彼女の人格が表側に出ている間にする行動は、全てがレイラのためだった。今回もいつものように、ずいぶんと長い眠りについているレイラのため何ができるかを彼女は考えた。
 しばらくして自身がやるべきことを決め終えると、思いついたことを実行へ移すために彼女はベッドから降りて机に向かった。机の右側一番下の引き出しにはレイラが愛用している写真機が入っている。彼女はそれをそっと取り出すと試しに一枚、部屋の中の風景の写真を撮ってみる。扱い方はそう難しくなさそうだった。この写真機で撮った写真はすぐに完成したものを見ることができないので出来栄えを確認してはいないが、綺麗な構図の写真かどうかはともかく、パレードの様子がわかる程度の写真は何枚か彼女にだって撮ることができそうである。
 彼女はそう考え、身支度を整えると祭りで賑わうスメールシティの中心部へ向かってくりだす。そして、パレードへ向けた練習も兼ねて、彼女はスメールシティの普段と違った光景を写真に収めて回っていった。
 花を使った装飾が頭上に広がり、人が集まる場所ではキャンディを模した飾りが植物の枝にかけられている。商人たちは花神誕祭へ向けて仕入れたとっておきの品々を売ろうと、懸命に道行く人に声をかけている。それらの光景を見て、たしかにスメールシティは祭りの最中なのだと彼女は思った。
 満足のいくまで写真を撮り終えると、彼女はプスパカフェでコーヒーとピタを注文した。注文したものを受けとった後、落ち着ける場所を探すために店の中を歩き回る。レイラが論文執筆中の休憩時間でプスパカフェを訪れた際によく座っていたテラス席がちょうど空いているのを見つけ、彼女はそこへ座った。そして、ピタを食べ始め、食べながら彼女は半ば無意識に写真機を撫でた。
 写真機を撫でながら自身の中で眠っているレイラに向かって何度か呼びかけたが、目覚めるような気配は相変わらずなかった。パレードには間に合うようにレイラの目が覚める可能性を彼女は捨てきれていなかったが、その気持ちもだんだんと薄まりつつあった。
「論文の執筆は終わった?」
 彼女がピタを食べ終えて少し経ったとき、そのように話しかける声があった。
 彼女は写真機を撫でる手を止め、声のした方を向く。そこには数日前に会話をしたばかりの旅人が立っていた。論文の執筆で忙しかったためか、彼女の方の人格が表に出る機会もここ最近は多かったので旅人とはつい最近、会っていたのだ。珍しく旅人の相棒であるはずのパイモンは一緒にいない。そのことについて少し違和感を抱きつつも、彼女は旅人の質問に答えた。
「ええ、終わったわ。あの子、すごく頑張ったのよ」
 旅人の表情がわずかに動く。旅人は彼女が星空の祝福であることに気づいたのであろう。彼女は旅人の表情の変化を横目で見ながら、さらに続けて言った。
「やる気に満ち溢れていて一度も夢遊しなかったの。でも、やっとのことで花神誕祭のパレードへ間に合うように論文を完成させたのに、提出した途端、眠ってしまったのよ」
「なるほど。起きそうな気配はない?」言いながら、旅人は彼女の向かいの椅子に座った。
「残念なことにその気配は全くないわ。この様子じゃ、パレード開始までに目覚めそうにはない。だから、あたしはパレードの様子をせめて写真に残して、あの子の机へ置いておこうと思っているの」
 旅人の表情は再び動き、優しげなものになる。もう一人のレイラである星空の祝福の、レイラに対する思いを感じとってくれたのだろう。
「だったら、いいことを教えてあげる」旅人はそう言うと辺りを見渡し、何かを確認してから彼女の方へ向き直って言った。「パレードの最中、サプライズを企画しているんだ。パイモンがここにいないのは、その準備があるから。サプライズというのは、ナヒーダが乗るフロート車へキャンディタワーをぶつけるというもので――もちろん、専門家を入れているからナヒーダが怪我をしてしまうおそれはないよ――きっとナヒーダにとって忘れられない誕生日になると思うんだ」
「その光景をあたしが写真機で写真に収めればいいわけね。クラクサナリデビ様の最高の笑顔とキャンディタワー、楽しそうな様子が撮れるに違いないわ」

 今見た光景が現実のものであるかどうかがわからず、彼女は数回まばたきをした。まばたきをするうちに、現実にいるのだという感覚がだんだんと彼女へ戻ってくる。
 なんとも不思議な光景だった。キャベツのような生き物たちがたくさんいて、それらがナヒーダの合図によって文字どおり光景を見せたのだ。
 その光景を見た彼女が感じたのは、星空の祝福ではなくレイラの方の人格が表に出ているときのようだということだった。一瞬、レイラが目覚めたのだと錯覚してしまうくらいには近い感覚だったのだ。
 しかし、それはただの錯覚だった。レイラがまだ目覚めていないのだということを元通り認識できるようになると、彼女はあわてて写真機を構えて今目の前にある光景を写真に収めようとシャッターを押した。パレードの様子を写真へ残すために彼女はここにいるのであって、その目的を忘れるわけにはいかなかった。
「あら、写真を撮っているの?」
 可愛らしい声が彼女の足元からした。写真機越しに風景をのぞき込むのを一旦やめて、声がした方を彼女は見る。教令院に入学したての子供くらいの背丈の少女がそこにはいた。彼女はこの少女のことをよく知っていたので、少女が見た目どおりの年齢ではないことがすぐにわかった。それもあたりまえのことで、少女は先ほどまでフロート車に乗っていた――彼女が撮った写真の中にも写っている――クラクサナリデビ、つまりナヒーダであった。
「そうです。クラクサナリデビ様」彼女は目の前にいるのがナヒーダであることに思い至ると、あわててうなずいた。
「素敵だわ。みんなが計画してくれた、一生忘れられない花神誕祭だもの。こんなに素晴らしい思い出を写真に残すのはとても良いアイデアね。わたくしにも撮った写真をもらうことはできないかしら?」
「もちろんです。写真が完成したらお渡しします」
「ありがとう。レイラ」
 名前をナヒーダから呼ばれて、星空の祝福はナヒーダがレイラの名を知っていることに驚いた。もう一人のレイラはナヒーダと知り合いなのだろうか。
「民の名前くらい覚えているわ。あなたがわたくしと話した覚えがないのは当然ね。わたくしが一方的に知っているだけだから」ナヒーダは星空の祝福の驚きを表情から読みとったのか、先回りして言った。「せっかくだし、あなたと一緒に写っている写真が撮りたいわ。今日、あなたと出会ってこうして話したことを思い出に残しておきたいの」
 星空の祝福は少し悩んだ後、うなずいた。「わかりました。クラクサナリデビ様からの誘い、光栄に思います。フロート車の上で撮りましょうか」
「そうしましょう」
 星空の祝福は辺りを見渡して、手持ち無沙汰にしている人に写真機のシャッターを押してもらうよう頼むと、フロート車についている階段を登った。上部にたどり着くと、ナヒーダと星空の祝福の配置のバランスがちょうどよくなるであろう場所に立った。そして、シャッターが押されるのを待ちながら、ここにいるのがなぜ自分――星空の祝福であるのかを考えた。

 急に意識が浮上するのをレイラは感じた。まるで数日間にわたる長い夢を見ていたようで、何かを考えることをすぐにできない。
 しばらくして、物事を考えられるくらいには思考が動き始める。眠りへつく前に自分は何をしていただろうか、と彼女は考え、やっていたことを思い出す。それを思い出した拍子に彼女はみるみるうちに夢の世界から現実に戻ってきて、あっと大きな声をあげて飛び起きた。
「論文を提出してそれで」そうつぶやきながら時計を見る。「パレードの時間」
 レイラは机の上にあったカメラをひっつかむと、あわてて自室を飛び出した。全速力でパレード中にフロート車が通ることになっている通りへ向かって走り抜ける。
 途中、レイラと同級の教令院の学生たちとすれ違う。レイラは足を止めて、彼らに向かって尋ねた。
「ねえ、パレードはもう始まっている?」
「パレード?」学生のうちの一人はいぶかしげな表情を浮かべつつ言った。「パレードが行われたのは昨日だよ。もう終わっている」
 それを聞いて、レイラは一気に気持ちが落ち込んでいくのを感じた。パレードを見るため必死に頑張ってきたのに、これまでの努力はなんだったのだろうか。まさか寝過ごしてしまうなんて。
 レイラは質問に答えてくれた学生たちに礼を言うと、落ち込んだ気持ちのまま歩き出した。十数歩進んだあたりで、あまりにもレイラが落胆した様子に見えていたのか、後ろから学生のうちの一人がレイラに向けて呼びかけた。
「パレードで使ったフロート車がオルモス港に展示されているらしいぞ」
「一般人でもフロート車に乗ることができるそうだ」ともう一人が続けて言う。
 レイラは学生たちの方を振り返ると軽く手をあげて感謝の気持ちを示した。そのまま、レイラはオルモス港への道を頭の中で思い出しながら、フロート車だけでも見ることのできる状態にあるのだから良かったのだと思わないと、と自身を励ました。

 オルモス港に展示されているフロート車はパレードに使用したときのままといった様子で、華やかな装飾が施してある状態だった。レイラは他の人がフロート車に集まっていない隙間をぬって、フロート車を様々な角度から自身の写真機に収めていった。
 寝過ごしてしまったという失態による不甲斐なさとがっかりした気持ちが織り交ざった感情はフロート車を見ることで収まるかと思ったが、そのようなことは一切なく、むしろ残念だという気持ちが増していた。この素晴らしいフロート車がパレード中、ナヒーダを乗せてスメールシティのメインストリートを通り抜ける様を想像して、この目でその様子を見たかった、とレイラは心の底から思った。
「あら、あなたは」レイラの背後で声がした。「パレードのときはありがとう。とても素晴らしい思い出になったわ」
 レイラが声のした方を見ると、一見幼い少女のような人物がそこにはいた。銀の髪に草花を思わせるような衣服を身にまとっていて――目の前の人物をそこまで観察した後、レイラは彼女が何者であるか思い至って、あっと大きな声を出した。
「クラクサナリデビ様」
「パレード以来ね、レイラ」ナヒーダはそう言いながらレイラに向かって手を振った。
「パレード?」レイラにはパレードを見に行った記憶はなかった。そのせいでレイラは落ち込んでいたのだ。「その、パレードのときにクラクサナリデビ様と私はお会いしているのでしょうか?」
「どうしてそんなことを聞くの? パレードのとき、一緒に写真を撮ったじゃない」
 レイラの質問にナヒーダは不思議そうな様子で言った。
「写真……」
 レイラは考え込んだ。何度思い返しても全くもって身に覚えのないことだった。まさか、夢遊してパレードを見に行って、クラクサナリデビと写真まで撮ってもらったのだろうか。もしそうなのだとしたら、夢遊というものはとても厄介な代物に違いないと改めてレイラは思った。夢遊中の行動をレイラは制御できないからで、夢遊中にクラクサナリデビ様へ失礼なことをしてしまっていたらどうしようか。
 そのようなことを考え出したレイラを、ナヒーダはしばらくの間観察するかのようにじっと見ていた。だが、あるとき思いたったかのように言った。
「よかったら一緒に写真を撮らない? あなたはわたくしと写真を撮った覚えがないという顔をしているわ。そうでしょう。だったらもう一度撮ってみるのはどうかと思ったの」
「いいんでしょうか」レイラは伺うようにしながらナヒーダに向かって確認した。
「もちろんよ」
 レイラはナヒーダが行動を起こす前、つまりナヒーダの手をわずらわらせないうちに、ちょうど近くで雑貨を売る店を開いていた人へ写真機のシャッターを押してくれないかとレイラは頼んだ。雑貨屋の店員はちょうど客がいなかったのもあってか、快諾する。店員がフロート車の前まで来るのを見届けた後、ナヒーダと一緒にフロート車のステップを上がって座席に座った。元々、ナヒーダ一人だけが座れるように座席は設計されていたのか少々狭い。二人は密着するような姿勢で、写真を撮り終わるのを待った。
 雑貨屋の店員は数回写真機のシャッターを押した後、レイラたちに対して手招きした。「これでいいかしら?」
「大丈夫かと思います。ありがとうございます」
 レイラはフロート車から降りて雑貨屋の店員から渡された写真機を受けとると礼を言った。仕事中であったわけだし、店員はすぐにその場を離れるかとレイラは思っていた。だが、店員はなかなかそうしようとしなかった。
「あの」おずおずといった風に店員は言い出した。「私もクラクサナリデビ様と写真を撮っていただくことはできないでしょうか」
「もちろん。撮りましょう」レイラの後についてフロート車から降りてきていたナヒーダはあたりまえだというように言った。「写真機はあるかしら?」
 店員は首を振る。その様子を見ていたレイラは自身の写真機で写真を撮ることを申し出た。嬉しそうに店員はうなずいて、ナヒーダと一緒にフロート車を昇っていく。二人が配置についたのを見てとると、レイラは雑貨屋の店員とナヒーダが並んで座る写真を異なる角度から数枚撮影した。
 レイラが写真機から風景を覗き込むのをやめて周囲を見たとき、フロート車のあたりにはちょっとした人だかりができていた。レイラの一番近くにいた二人組は、レイラが写真を撮り終えたのを見たためか、待ってましたとでもいうようにすかさず話しかけてきた。
「可能でしたら、私たちもクラクサナリデビ様と写真を撮りたいです」
 その申し出を聞いたレイラはどうすればよいのかわからないといったような表情で、ナヒーダの方を見た。ナヒーダはレイラが困惑していることをすぐに察したようで、フロート車の座席から立ち上がると言った。
「もちろん撮りましょう。順に並んでちょうだい。レイラ、引き続き写真機で写真を撮ってほしいのだけどいいかしら?」
 レイラはナヒーダから頼み事をされていることに気がつくと、あわててうなずいた。「もちろんです」
 それから日が落ちるまでの間、レイラは写真を撮り続けた。ナヒーダの人気ぶりはさすがだ、とレイラは写真を撮る合間に思った。そして、写真を撮ってもらいつつスメールの民と交流をするナヒーダがとても楽しそうであるのを見て、来年もまたその次の年もこのような光景がずっと続けばいいな、と思った。
「クラクサナリデビ様に幸せがありますように。誕生日おめでとうございます」
 レイラは写真機のシャッターを押した後、そっと呟いた。そのときのレイラが浮かべていた表情はとても穏やかであった。

 すごい一日だった、と自室に戻ってきたレイラはまず最初にそう思った。
 パレードを寝過ごしてしまったことは残念であったが、それを覆す以上の素晴らしいできごとがあった。ナヒーダと写真を撮るなんて機会はそうあるものでないし、他の人とナヒーダの写真を撮るという大役までナヒーダから直々に仰せつかったのだ。
 レイラは心地よい気持ちのまま、机の方へ向かった。日はすっかり暮れて、就寝時間まであと少しという時間ではあったが、まだ眠れそうにない。この興奮した気持ちを落ち着けるために、今日撮った写真の確認でもしよう――レイラはそう考えていた。
 机の上を見たとき、見覚えのない写真が置かれていることにレイラは気がついた。部屋を出るときはあわてていたため気づかなかったのだろう。
 その写真は数十枚あった。端をそろえて重ねられていて、そのうちの上の方は花神誕祭によって活気があふれているスメールシティ中の光景を収めたものだった。めくっていくと、次にパレード中の写真が現れる。パレードを見ることのできなかったレイラのために誰かが置いてくれたのだろうか。でも、いったい誰が、とレイラは首を傾げた。
 そして写真をめくっていくうちに最後の一枚となる。最後の写真はレイラとナヒーダがフロート車の上に並んで座っているところを撮られたものだった。今日撮ってもらった状況と同一であるが、背景にあるのはオルモス港ではなくスメールシティで、別日に撮ったものであることは明らかだ。
 レイラはしげしげと写真を見つめ、裏返した。右下のあたりに文字が書かれている。
『論文完成おめでとう。そしてお疲れ様。これは、同じあなたと周波数を持つあたしがあなたへ贈る、祝福よ』
「奇跡は本当に起こったわ」
 レイラは思わず、そうつぶやいていた。そのときのレイラが思い返していたのは、論文の謝辞に書いていた内容であった。

あとがき

花神誕祭イベントの裏側のような二人のレイラ視点のお話です。 教令院現役生のプレイアブルキャラが少ない(というか、特別な事情のあるファルザンはともかくしてレイラが唯一な気がしています)ためか、レイラのイベント時の出番が若干少ない気がしているので、もっと増えろ~という思いも込めて書いてみました。


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